歌詞分析

【歌詞分析】PIERROTの歌詞をテキストマイニングで分析してみた

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宗教的なカリスマ性中毒性のある歌詞・サウンドで多大な信者を生み出したものの、2006年突如解散してしまったバンド『PIERROT』。

今回の記事は、そんな『PIERROT』の楽曲の歌詞をテキストマイニングで分析してみようという試みです。

分析方法

KH Coderというツールを使い、『PIERROT』の楽曲に使用される単語の登場頻度を測ってみようと思います。

『PIERROT』の世界観がどのように構築されているのか、頻繁に登場する言葉を見ることで分析してみるというわけです。

(KH Coderの詳細については、本ページ下段の”参考”をご覧ください)

分析対象

分析対象は以下のアルバムに収録されている楽曲としました。

#アルバム名対象楽曲数
1パンドラの匣10
2CELLULOID6
3FINALE13(*1)
4PRIVATE ENEMY14(*2)
5HEAVEN 〜THE CUSTOMIZED LANDSCAPE〜14(*3)
6ID ATTACK12
7FREEZE11
総計80

(*1)『クリア・スカイ』はシングルバージョンの歌詞を利用。

(*2)『Analyze Chat「FREAKS」』は分析対象外。

(*3)隠しトラックの『PARDOX』と『SUPER STRING THEORY』は分析対象。

分析結果

分析結果(単語の登場頻度)を“全体”“アルバム別”に見てみます。

楽曲全体

『PIERROT』の分析対象楽曲全体における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞221
2代名詞93
3代名詞40
3見える動詞40
5副詞可能37
6名詞C33
6代名詞33
8名詞C32
8見る動詞32
10消える動詞31
10副詞可能31

登場頻度の堂々第1位は「君」でした。『PIERROT』の世界観における二人称は「貴方」ではなく「君」の利用が圧倒的に多いということが改めてわかります。

また、続く2位は「僕」ということで、1位、2位は二人称、一人称の代名詞ということになりました。

二人称、一人称の代名詞は『PIERROT』に限らず上位に来そうな単語ですね。

代名詞を除くと、「見える」、「今」、「手」、「胸」、「見る」が登場頻度トップ5になります。

この辺りの単語が『PIERROT』の世界観の特徴になってくるワードかなと思いますが、意外と普通というか、そこまで中二病要素は見当たりませんね(残念)。

10位に揃って出てきている「消える」と「夜」が若干中二病的ではありますが、邦楽の歌詞なら割と頻繁に出てくる単語かな…。

パンドラの匣

続いてアルバム別の分析結果です。まずは『パンドラの匣』から。

『パンドラの匣』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞20
2代名詞15
3貴方代名詞12
4代名詞11
5求める動詞10
6消える動詞9
7名詞C8
8気付く動詞7
8名詞C7
8見える動詞7
8言える動詞7
8出来る動詞7
8全て副詞可能7
8名詞C7

全体で見たときと同じく、1位と2位は「君」と「僕」ですが、3位に「貴方」が入ってきているのが『パンドラの匣』の特徴の一つですね。

二人称として「君」と「貴方」の二種類を使い分けていることが伺えます。

そして、4位の登場頻度を誇る「彼」は『パンドラの匣』におけるかなり大きな特徴ではないでしょうか。

乙女心を歌う女性アーティストの歌詞なら、恋人のことを「彼」と呼ぶこともあるでしょうが、『PIERROT』の「彼」はもちろんその意味では使われていません。

『PIERROT』の場合は、文字通り“「君」でも「僕」でもない第三者”的な意味で「彼」を使用しているものと思われます。

三人称を表す代名詞という意味では、例えば、”あいつ”という言葉もありますよね。

こちらの方が割と歌詞に出てくる頻度の高い三人称かと思いますが、”あいつ”だと、対象を少し見下している要素が入っているような印象があります。

それに比べ、「彼」という代名詞は、非常に客観的というか、感情の入っていない無機質な響きがあります。

その無機質な響きに、聴き手はそれぞれの想像を重ね、ついつい『パンドラの匣』というアルバムを聴き込んでしまうのかもしれませんね。

CELLULOID

インディーズ時代にリリースされたミニアルバム『CELLULOID』。

『CELLULOID』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞16
2見える動詞6
3名詞C5
3名詞C5
3想う動詞5
3代名詞5
7子供名詞4
7笑顔名詞4
7生きる動詞4
7無い形容詞4

まず、『CELLULOID』は収録曲数が少ないため、個々の楽曲で使用される言葉の頻度にアルバムの分析結果が大きく左右されがちな点は否めません。

それでも、「僕」などの一人称がトップ10位以内に入っていないのは『CELLULOID』の特徴の一つと言っていいと思います。

そして、この結果をどう見るかですね。

客観的過ぎる内容ばかりで一人称を使用していないのか、もしくは、逆に自分のことを歌いすぎて一人称を使う必要がなかったのか…。

個人的には後者のような気がしています。

あと、「笑顔」、「生きる」など割とポジティブな言葉の登場頻度が高いところは意外な結果に見えるかもしれません。

ただ、冒頭に書いた通り、『CELLULOID』は収録曲数が少ないので、とある楽曲で繰り返し使用される言葉が大きく反映されたためこのような結果になったものと思われます。

この辺りを『CELLULOID』収録曲全体の傾向と捉えると、少し事実と異なる恐れがあるので注意です。

FINALE

ここからはメジャーデビュー後の作品になります。

『FINALE』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞34
2代名詞16
3名詞C6
3受ける動詞6
3終わる動詞6
3待つ動詞6
3変わる動詞6
8名詞C5
8繰り返す動詞5
8見せる動詞5
8見える動詞5
8代名詞5
8未来名詞5
8眠る動詞5
8無い形容詞5
8連れる動詞5

1位と2位に「君」と「僕」が登場するのは想定内。

やはり特筆すべきは3位の「終わる」という動詞ですかね。

『FINALE』というアルバム名に相応しい単語が相当の頻度で出てくるということが改めてわかります。

一方、8位に「繰り返す」という動詞が位置しているのもおもしろいところ。アルバム名と密接に絡む3位の「終わる」と正反対とも言えるワードです。

ただ、そんな言葉が何度も登場してくるからこそ本作『FINALE』が深みのあるアルバムに仕上がっているのでしょうね。

“何かが始まるために何かが終わる、その繰り返し…”というストーリーがここから想像できます。

あとはJ-POP御用達ワードの「空」の登場頻度が高いというのも本作『FINALE』の特徴でしょうか。

実は、『PIERROT』全体で見ると、「空」という言葉は登場頻度TOP10に入っていません。

しかし、アルバム『FINALE』には『クリア・スカイ』と『MAD SKY -鋼鉄の救世主-』と、「空」をテーマにしたシングルが2作収録されています。

そういう意味でも、『FINALE』単体で見たとき、「空」というワードが登場頻度の上位に位置しているのは素直に納得できるところです。

PRIVATE ENEMY

メジャー2ndアルバムの『PRIVATE ENEMY』。

『PRIVATE ENEMY』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞41
2代名詞20
3ここ代名詞10
4代名詞9
4聞こえる動詞9
4名詞C9
7副詞可能8
8どこ代名詞7
8見える動詞7
9見る動詞6
9名詞C6
9怖い形容詞6
9未来名詞6
9副詞可能6

1位と2位に「君」と「僕」が登場するのはやはり想定内。

『PRIVATE ENEMY』で特徴的だなと感じたのは“場所を表す代名詞”の登場頻度の高さですね。3位の「ここ」や8位の「どこ」といった単語です。

特に、「君」と「僕」に次いで登場頻度の高い「ここ」という言葉は注目です。

「ここ」とは、”自分が現にいる場所”を指す言葉なわけですが、まさにアルバム名に冠された「PRIVATE」というワードと密接な繋がりを感じられます。

『PRIVATE ENEMY』収録曲名や歌詞の中には「PRIVATE」というズバリな単語は出てきません。

しかし、こうやって収録曲の歌詞に使用される単語の登場頻度を見てみると、実は、「ここ」という非常にプライベート性の高い言葉が随所に散りばめられていたことがわかります。

『PRIVATE ENEMY』という一本筋の通った世界観が、言葉の隅々に行き渡っていることに改めて気付かされますね。

HEAVEN 〜THE CUSTOMIZED LANDSCAPE〜

メジャー3rdアルバムの『HEAVEN 〜THE CUSTOMIZED LANDSCAPE〜』(以下、『HEAVEN』)。

『HEAVEN』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞49
2代名詞19
3可能副詞12
4それ代名詞10
4代名詞10
4副詞可能10
7記憶サ変名詞9
7出来る動詞9
9そこ代名詞8
9願い名詞8
9終わる動詞8
9笑う動詞8
9探す動詞8

1位と2位に「君」と「僕」が登場するのはもちろん想定内。

7位以下に出てくる「記憶」、「願い」、「探す」辺りが『HEAVEN』特有な単語ですかね。

比較的ロマンティックなワードが並んでいるんじゃないかなと思います。

あと、9位に登場している「そこ」という単語も気になります。

というのも、前作『PRIVATE ENEMY』にて多用されていた「ここ」というワードと対照的だからです。

「ここ」が”自分が現にいる場所”を指しているとするなら、「そこ」は”聞き手に近い場所”を指していると言えるでしょう。

「ここ」=”僕のいる場所”、「そこ」=”君のいる場所”と言い換えてもいいかもしれません。

そう考えると、前作『PRIVATE ENEMY』では”僕のいる場所”が歌われ、続く本作『HEAVEN』では“君のいる場所”が歌われていると解釈できるのではないでしょうか。

…まぁ、上記の解釈は所詮「ここ」と「そこ」という代名詞の登場頻度を見ているだけなので、少々想像力を膨らませ過ぎている可能性はあります。

でも、こんなふうに考えてみると改めて『HEAVEN』がロマンティックな作品に見えてきませんかね 笑?

ID ATTACK

メジャー4thアルバムの『ID ATTACK』。

『ID ATTACK』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞41
2代名詞13
3世界名詞10
4未来名詞8
4名詞C8
6見える動詞7
7いつ副詞可能6
7ここ代名詞6
7名詞C6
7見る動詞6
7名詞C6
7副詞可能6
7副詞可能6
7全て副詞可能6
7描く動詞6

この分析結果の第一印象は“非常にポジティブ!”でした。

だって、ねぇ、「未来」とか「夢」がTOP5に入っているんですもん。

TOP10以内を見てみても、「光」とか「前」とか、かなりポジティブ要素高めなワードが並びます。

過去の作品に特別ネガティブな単語が頻出していたわけではないのですが、ここまでポジティブな言葉で溢れているのは本作『ID ATTACK』の特徴と言ってよいでしょう。

とは言え、アルバム『ID ATTACK』の聴き心地もポジティブなものかと問われると、それはちょっと違う気がします。

“統計的手法に基づく分析結果”と”実際の聴き心地”が異なるというのはなかなか面白い現象だなと思いますが、結局のところ“皮肉”というのが一つの着地点なのでしょうね。

つまり、やたらポジティブな言葉を散りばめることで”皮肉”を演出しているという考えです。

…本作『ID ATTACK』では、ポジティブなワードをふんだんに使って、いったい”何を”皮肉っているのか?

…。

それは登場頻度第3位の単語に答えが書いてあるかと思います。

FREEZE

メジャー5thアルバムであり、『PIERROT』のラストオリジナルアルバム『FREEZE』。

『FREEZE』収録曲における単語の登場頻度は以下の通りでした。トップ10位までを表示します。

順位単語品詞/活用頻度
1代名詞20
2代名詞10
2代名詞10
4副詞可能8
4代名詞8
6記憶名詞7
6名詞C7
8名詞C6
8名詞C6
8自由形容動詞6
8名詞C6
8消える動詞6
8代名詞6
8名詞C6

ラストアルバムにして、とうとう番狂わせが来ましたね。

なんと、「僕」を押しのけて「俺」という一人称の代名詞が登場頻度の第二位に位置しているのです!

この変化は大きいと言わざるを得ません。

本作『FREEZE』はサウンドもかなり攻撃的ですが、こうして見ると、一人称まで攻撃的になっていたことがわかりますね。

この流れで行くと、もし『FREEZE』の次にオリジナルアルバムが出ていたとしたら、「君」が“お前”に変わっていたのかも 笑。

あと、ここに来て「闇」や「傷」といった中二病的ワード(偏見?)が顔を出しましたね。

ただ、『PIERROT』全体で見てみると、「闇」は登場頻度61位、「傷」は登場頻度71位で、意外にも頻繁に使われているワードではないのです。

そう思うと、「闇」や「傷」といった中二病的ワードの安易な使用を控えておきながら、それでいて極上の中二病的世界観を構築するというのがこれまでの『PIERROT』の魅力だったのかもしれません。

逆に言うと、本作『FREEZE』では「闇」や「傷」といった直接的な言葉を多用することで、ねっとりとした中二病的世界観を卒業し、よりシンプルな攻撃性を追求しているのかもしれませんね。

おわり

ここまで長々と読んでいただきありがとうございます。

私が中学生のときアホほどハマっていた『PIERROT』というバンドの歌詞について、当時よりも少し賢くなったであろう頭を使って分析をしてみました。

今回はテキストマイニングという理系的アプローチを取って分析みましたが、いかがでしたかね?

まぁ、やっていることは登場する単語を数えているだけなので、それほど崇高なことはしていませんが 笑。

これを読んでくださった皆様に、『PIERROT』について一つでも新たな発見がありましたら幸いです。

※『PIERROT』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/PIERROT

参考

・KH Coder: 計量テキスト分析・テキストマイニングのためのフリーソフトウェア
http://khcoder.net/

・形態素解析ツールの品詞体系 ChaSen 品詞体系 (IPA品詞体系)
http://www.unixuser.org/~euske/doc/postag/#chasen

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執筆者:キャスター
中高生の頃、中古のCD屋巡りばっかりやってました。そんなアラサー会社員キャスターによる音楽レビューブログ。 昔趣味で曲作りをやっていたので、音楽制作者に敬意を払って1曲1曲丁寧に記事を書いていきます。