90年代後半、音楽業界の様々な記録を塗り替えていったモンスターバンド『GLAY』。
ヒットソングだけを取り出してみれば、確かに耳馴染みの良い王道J-POPな楽曲で溢れていますが、ひとたび『GLAY』の世界へ足を踏み入れると、そこには成功者ゆえの苦悩に満ちた孤独の世界を垣間見ることができます。
そこは我々凡人にとっては到底辿り着ける境地ではありませんが、その途方に暮れるほどの景色を、TAKUROの紡ぐ言葉とメロディーによって私たちもほんの少しだけ追体験できるような気がします。
今回は、『GLAY』の楽曲、『Fighting Spirit』のレビューです。
※『GLAY』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/GLAY

『Fighting Spirit』の全体概要
基本情報
アーティスト | GLAY |
曲名 | Fighting Spirit |
演奏時間 | 5:07 |
作詞 | TAKURO |
作曲 | TAKURO |
編曲 | GLAY & 佐久間正英 |
『Fighting Spirit』収録アルバム
アルバム名 | トラック# |
ONE LOVE | 5 |
オリジナルアルバム『ONE LOVE』の5曲目に収録。
※『Fighting Spirit』が収録されているアルバムのレビューもしています。こちらからどうぞ。
レビュー
非シングル曲ながらMVが用意され、アルバム『ONE LOVE』の中心的存在を担う楽曲が本作『Fighting Spirit』。
そして、この『Fighting Spirit』こそ、商業的成功を収めた『GLAY』だからこそ描ける、成功者ゆえの苦悩が歌われた名作です。
本作『Fighting Spirit』には、恋人よりも夢を選び、それが正解なのか迷いながら生きる姿、もう少し言えば、それが正解であってくれと願いながら生きる姿を感じ取れます。
自ら選んだ夢の果て、そこであんなにも商業的成功を収めたにもかかわらず、それでも尚、これが正解であったのか迷うというのは…いったいどんな景色なんでしょうね。
少なくとも、『Fighting Spirit(闘志)』を持って歩き続けなければいけない道が見えていたのでしょう。
そして、私が本作『Fighting Spirit』を名作だと思う大きな理由は最後のフレーズにあります。
なんと、「生きる事は辛いな」と言って締めているのです…!
これが迷い抜いた結論なのかと思うと、どうしようもないほどに希望の無いフレーズ…!
…ただ、これが当時の本心だったのだろうと思います。
歌にするにはあまりに酷な言葉ですが、成功者ゆえの苦悩という少々共感されにくい心情を描くには、この言葉を選ぶ他なかったのだろうと思うのです。
曖昧に形容した言葉で済ますのではなく、堂々と「生きる事は辛いな」と言い切ってしまうこの『Fighting Spirit』という作品に、私は大きく心を打たれました。
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『Fighting Spirit』収録アルバムレビューリンク
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