個別楽曲レビュー

【個別楽曲レビュー】GLAY/夢遊病

投稿日:2019年4月12日 更新日:

90年代後半、音楽業界の様々な記録を塗り替えていったモンスターバンド『GLAY』。

ヒットソングだけを取り出してみれば、確かに耳馴染みの良い王道J-POPな楽曲で溢れていますが、ひとたび『GLAY』の世界へ足を踏み入れると、そこには成功者ゆえの苦悩に満ちた孤独の世界を垣間見ることができます。

そこは我々凡人にとっては到底辿り着ける境地ではありませんが、その途方に暮れるほどの景色を、TAKUROの紡ぐ言葉とメロディーによって私たちもほんの少しだけ追体験できるような気がします。

今回は、『GLAY』の楽曲、『夢遊病』のレビューです。

※『GLAY』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/GLAY

butterfly

『夢遊病』の全体概要

基本情報

アーティストGLAY
曲名夢遊病
演奏時間3:37
作詞TAKURO
作曲TAKURO
編曲GLAY & 佐久間正英

『夢遊病』収録アルバム

アルバム名トラック#
ONE LOVE15
REVIEW II -BEST OF GLAY- (JIRO盤)3

オリジナルアルバム『ONE LOVE』の15曲目に収録。

※『夢遊病』が収録されているアルバムのレビューもしています。こちらからどうぞ。

レビュー

私の中で『GLAY』最高傑作の一つ、『夢遊病』。

『GLAY』というモンスターバンドを生み出し、育ててきたTAKURO。彼の感じる成功者ゆえの苦悩が、本作『夢遊病』ではオブラートに包むことなく描かれています。

どの言葉も重みがあるのですが、やはり2番サビで歌われた夢に対する虚無感は歴史に残る名フレーズではないでしょうか。

こんなこと歌っちゃっていいの?というくらいに絶望的なフレーズ

“夢を叶えようよ”、”夢を追うことは素晴らしいよ”と歌う歌は数あれど、“夢が叶ってしまった後の虚無感”をこれほど暴力的なまでにストレートな言葉で表現した作品にはなかなか出会えません。それくらい強烈。

函館から上京し、昔の仲間のまま音楽シーンを制覇したという、まさにビッグな夢を叶えた『GLAY』がこんなことを歌っているのですから、その説得力は半端ではありません…!

“夢が叶った後の向こう側”という、我々のような凡人には到底見ることのできない景色を描いているのですが、やたら『夢遊病』にリアリティを感じるのは、『GLAY』の歴史が無言のままに語る説得力のおかげでしょう。

そして『夢遊病』というタイトルの秀逸さ。

この言葉は本来は”眠りながら起き上がって動き回る症状”を指すわけですが、もちろん楽曲中で夢遊病という症状そのものを歌っているわけではありません。

曲の内容的に、“意識も無く取りつかれたようにバンドで成功するという夢を追いかけた自分”という意味で『夢遊病』という言葉を使っているのではないでしょうか。

そう考えると、この楽曲は文字通り『夢遊病』です。

“夢”という一見ポジティブ100%に見える言葉に対し、致死量の毒を盛ることに成功したキラーワードだと思います。

Amazonで試聴できます。

『夢遊病』収録アルバムレビューリンク

※『GLAY』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/GLAY

-個別楽曲レビュー
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

【個別楽曲レビュー】LUNA SEA/BELIEVE

2000年に終幕をし、長らく伝説のバンドとなっていましたが、2010年に活動を再開した『LUNA SEA』。 ヴィジュアル系というジャンルにおけるバンドアンサンブルの方針、特に、ツインギターの絡み方を …

【個別楽曲レビュー】L’Arc〜en〜Ciel/milky way

日本を代表する説明不要のロックバンド、『L’Arc〜en〜Ciel』! かっこいい楽曲に加え、時々垣間見られるちょっとした遊び心が長い人気の秘訣ではないでしょうか。もちろん、ボーカルhyd …

【個別楽曲レビュー】THE YELLOW MONKEY/見して 見して

2016年、申年に復活を遂げた『THE YELLOW MONKEY』!! シングルのリリースはあったものの、2018年7月現在、未だに復活後のオリジナルアルバムが発表されていません(*)。過去の名盤た …

【個別楽曲レビュー】hide/HONEY BLADE

伝説のミュージシャン…その言葉が最も似合う日本人は、やはり『hide』ではないでしょうか。 カリスマバンド『X JAPAN』のギタリストというポジション、トレードマークの赤髪、ズバ抜けたセンス、そして …

【個別楽曲レビュー】相対性理論/ペペロンチーノ・キャンディ

2000年代後半、一部の世間をざわつかせた(?)不思議系おしゃれバンド『相対性理論』! 実験的な言葉選びとアレンジが非常に個性的です。 最初のミニアルバム『シフォン主義』の発表から10年以上が経過した …


執筆者:キャスター
中高生の頃、中古のCD屋巡りばっかりやってました。そんなアラサー会社員キャスターによる音楽レビューブログ。 昔趣味で曲作りをやっていたので、音楽制作者に敬意を払って1曲1曲丁寧に記事を書いていきます。