90年代後半、音楽業界の様々な記録を塗り替えていったモンスターバンド『GLAY』。
デビューから20年以上経つベテランバンドですが、長寿バンドに付きものの”メンバー間の確執”とは無縁なところも、もはや『GLAY』の個性と言えそうです。”平和なロックバンド”というある意味矛盾したフレーズですら納得して飲み込んでしまえる、そんな懐の深さを『GLAY』には感じますよね。
今回は、『GLAY』の個別楽曲、『Will Be King』のレビューです。
※『GLAY』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/GLAY
『Will Be King』の全体概要
基本情報
アーティスト | GLAY |
曲名 | Will Be King |
演奏時間 | 7:29 |
作詞 | TAKURO |
作曲 | TAKURO |
編曲 | GLAY& 佐久間正英 |
約7分半と、本作『Will Be King』がアルバム『HEAVY GAUGE』収録曲の中で最も演奏時間の長い楽曲になります。
『Will Be King』収録アルバム
アルバム名 | トラック# |
HEAVY GAUGE | 10 |
オリジナルアルバム『HEAVY GAUGE』の10曲目に収録。
※『Will Be King』が収録されているアルバムのレビューもしています。こちらからどうぞ。
レビュー
途中で楽曲の雰囲気がガラッと変わる様子が印象的な楽曲、『Will Be King』。
まるで元は別々の曲だったものをくっつけたんじゃないかと思うような構成になっているんですよね。
雰囲気の変わる前後をそれぞれ前半、後半と呼ぶことにしますが、前半には前半のAメロ、Bメロ、サビがありますし、後半には後半の、前半とは全く異なるAメロ、Bメロ、サビがあるのです。
後半終了後に再度前半のモチーフが登場するような、いわゆるサンドウィッチ的構造になってるわけでもないので、本当に別々の曲を単純連結したように感じるのです。
ただ、その単純連結が…本作『Will Be King』の魅力だと思っています。
教科書的に観察するなら、本来は前半のモチーフを最後にもう一度繰り返すべき(サンドウィッチ構造にすべき)なんですよね。単純連結よりもこちらの方が繰り返しという観点でも印象に残りますし、何より感動的フィナーレを迎えた感がでます。
漫才でも、前半に出した伏線をオチで回収するとかっこいいですよね。そんな感じ。
しかし、本作『Will Be King』はそうではありません。前半のモチーフは再登場させず、前半と後半を単純連結させて作品を完結させています。
なぜか。
本作『Will Be King』の前半後半で何が歌われているか見てみますと、前半で“すばらしき過去”を描き、後半で“現実との葛藤”を描いています。
サンドウィッチ構造ではない、単純連結構造を用いることで不可逆的な運命の流れを表現しているのではないでしょうか。
“すばらしき過去を取り戻すことはもうできない”ということを言葉(歌詞)だけでなく、まさに音楽そのもので表現しようと試みている、そのためにセオリーのサンドウィッチ構造を無視して単純連結を選択したのではないか、私はそう考えています。
なんだか、一種のバッドエンド映画のようですが、”すばらしき過去”→”現実との葛藤”を描いてそのまま楽曲を閉じることで、なんとも言えない余韻を楽しめます。
それから、楽曲の構造もすばらしいですが、個人的には、後半の”現実との葛藤”で用いられている言葉の選択が大好きです。
現実を見つめ、それを打破できない自分に対する苛立ち…そこにとてもリアルな感情を重ねてしまいます。
『Will Be King』収録アルバムレビューリンク
※『GLAY』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/GLAY