宗教的なカリスマ性と中毒性のある歌詞・サウンドで多大な信者を生み出したバンド『PIERROT』。
アンダーグラウンドで知的で過激。当時の10代リスナーはある種の選民思想を抱きながら『PIERROT』の楽曲に耳を傾けていたのではないでしょうか。”『PIERROT』を聴かないなんて周りはわかってないなぁ”って。
…それは後の世で中二病と呼ばれるわけですが…。
今回は、『PIERROT』の楽曲、『鬼と桜』のレビューです。
※『PIERROT』に関するその他のアルバム/個別楽曲レビューはこちらからどうぞ: アーティスト索引/PIERROT
『鬼と桜』の全体概要
基本情報
アーティスト | PIERROT |
曲名 | 鬼と桜 |
演奏時間 | 5:42 |
作詞 | キリト |
作曲 | キリト |
編曲 | Pierrot & 奈良敏博 |
『鬼と桜』収録アルバム
アルバム名 | トラック# |
CELLULOID | 5 |
DICTATORS CIRCUS -奇術的旋律- | 6 |
インディーズ時代のミニアルバム、『CELLULOID』の5曲目に収録。
そして再録ベストアルバムの『DICTATORS CIRCUS -奇術的旋律-』には6曲目に収録されています。
こちらは『CELLULOID』版と異なり、冒頭に新たなイントロが追加されています。
※『鬼と桜』が収録されているアルバムのレビューもしています。こちらからどうぞ。
レビュー
和の艶やかさを織り交ぜながらも激しい曲調がかっこいい1曲、『鬼と桜』。
和っぽいギターシンセの音とメロディーが強い印象の輪郭を描きながらも、その裏では叩きつけるような歪んだギターのコードが鳴り響き、手数の多いドラムが躍動感あるリズムを演出。
そんなかっこよすぎるイントロに、いつも痺れてしまいます!
このかっこいいイントロの派手さに比べると、サビの印象は少々弱いかもしれません。あまりキャッチーではない、淡々としたサビのように感じます。
ただ、サビのボーカルの空白を縫うように左チャンネルから聴こえるギターフレーズがとても私の好みですので、これはこれで全然アリなんですよね。
本作『鬼と桜』のテーマは”輪廻転生”なのでしょうかね。そのせいか、歌詞の世界観は非常に仏教的。
一方で、Bメロに「鎌を持つ使者」が登場するのですが、これはいわゆる”死神”を指していると思われます。大きな鎌を持ち、黒い頭巾をかぶった骸骨のあれかと。
ただ、あれって西洋の死神ですよね?仏教的世界観に登場するキャラクターとしてはちょっと違うような気もしますが…どうなんでしょう。単に私の解釈が間違っているだけかもしれません。
いずれにせよ、主人公が輪廻転生を経る中で辿り着いた「浄化の果て」。その光景の皮肉さはなかなか素敵です。
アルバム『CELLULOID』の1曲目『セルロイド』では”人間は他の生物を見下している”ような描写をしておきながら、同アルバム収録の『鬼と桜』に登場する人間は「虫ケラの様に」交わっているわけですからね。しかも「浄化の果て」で。
まさに「滑稽な姿」です。
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