ボーカルとベースの二人組という珍しい組み合わせのバンド、『黒夢』。
メジャーデビュー時はボーカル、ベース、ギターの3人構成だったのですが途中でギターの臣が脱退。その後はメンバー補充することなくボーカルの清春とベースの人時の二人で活動していくことになります。2010年の復活後もその体制は変わっていません。
今回は、『黒夢』の楽曲、『優しい悲劇』のレビューです。
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『優しい悲劇』の全体概要
基本情報
アーティスト | 黒夢 |
曲名 | 優しい悲劇 |
演奏時間 | 4:36 |
作詞 | 清春 |
作曲 | 清春 |
編曲 | 黒夢 & 佐久間正英 |
メジャー3rdシングル。
『優しい悲劇』収録アルバム
アルバム名 | トラック# |
feminism | 8 |
EMI 1994〜1998 BEST OR WORST 【SOFT DISK】 | 2 |
黒夢シングルズ | 3 |
黒夢コンプリート・シングルズ (A-disc) | 3 |
オリジナルアルバム『feminism』の8曲目に”album mix”にて収録。
※『優しい悲劇』が収録されているアルバムのレビューもしています。こちらからどうぞ。
レビュー
ギターの臣が脱退した新体制『黒夢』における初シングルが本作『優しい悲劇』。
1stシングル『for dear』と2ndシングル『ICE MY LIFE』はいずれも臣が作曲を担当していましたので、清春作曲のシングル楽曲は3rdシングルの本作『優しい悲劇』が初めてということになります。
この楽曲で耳を引くポイントはやはりピアノでしょうか。
イントロなどで聴けるピアノの音色がやけに印象的です。『優しい悲劇』という字面をみるとサビの歌詞やメロディーよりもイントロのピアノの音が頭で再生されるくらい。
ただ、『優しい悲劇』を聴き直してみると、思いのほかピアノが登場する頻度や目立ち度合いは決して高くないことがわかります。にもかかわらず、こんなに『優しい悲劇』=ピアノという印象があるのは、それだけピアノの使い方が効果的なのでしょう。
あと、本作『優しい悲劇』が作り出す冬の季節感がけっこう好きです。
上述のピアノもそれに一役買っているとは思いますが、やはりバンドサウンド、特にギターの音色やフレーズが冬の寒さを演出しているように感じます。歌詞を引用するなら、「2月」の寒さでしょうか。
これ、「2月」というのがポイントですよね。
同じ冬でも”12月”を演出するなら、鐘の音とかゴスペルとか、クリスマスっぽい音を入れれば多分それらしく聴こえるでしょう。それに比べると、イベントに頼れない、寒いだけの「2月」を音楽で表現するってけっこう難しいことなんじゃないかと思うのです。
しかも、決してスローテンポな楽曲じゃありません。それなりのスピード感を伴った上で冬の寒さを表現しています。
本作『優しい悲劇』にて提示された“スピード感のある冬の季節感”というテーマ、これは後のヴィジュアル系バンドにも引き継がれた要素なんじゃないかと思っています(『Dir en grey』の『-I’ll-』とか、『PIERROT』の『HILL -幻覚の雪-』とか)。
そういう意味では、本作『優しい悲劇』も『黒夢』の残した歴史の足跡の重要な一つだと言えそうですね。
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